01-17 若狭路を行く
昨年秋の遠野に続いて、今回も、「朝ドラロケ地」探訪なのです。ええ、「ちりとてちん」。とってもいいドラマでした。「あそこに行きたい!」と思うきっかけなんていろいろあるんですけど、そう思った瞬間こそ大事にしないと、なかなか行く機会も無くなってしまう場合もあります。小浜の素朴だけど、海に面した街の、独特の生活風景が印象に残り、今までに出会った事の無い風景に出会えそうな期待、そしてなんといっても「焼き鯖が食べたい!」という願いを叶えるために、一路福井を目指しました。

まずはひたすらに東名を名古屋目指して西へ。小牧で名神に乗っかり、米原で北陸道と繋いで、敦賀ICで降ります。その距離444km。朝4時に自宅を出て、11時くらいに敦賀に到着しました。

始めて見る若狭湾にウキウキしながら、国道47号通称丹後街道を西へ。敦賀ICから約10kmほど走ると、三方五湖(みかたごこ)という景勝地があります。その名のとおり、5つの湖があります。 三方五湖の北側に、三方五湖レインボーラインという有料道路があります。「かわらけ投げ」で有名な、梅丈岳山頂公園まで上っていくことができます。ちなみに「かわらけ投げ」渋滞が出来ており、梅丈岳私はあきらめちゃいました。「ちりとてちん」効果ですね。
若狭湾の展望。ちょっとガスってて、水平線の位置が解りにくく、余計に海が雄大に感じます。とっても穏やかで、同じ日本海でも東北の日本海の風景とは雰囲気がまた違って見えます。 こちらは、三方五湖の展望。海水と淡水のまじり具合、水深などの違いで、5つの湖の色がそれぞれ違うのだそうです。 レインボーラインから一般道に入ると、三方五湖の西側は梅林が続いています。
路上にはこのように、梅干しを売る出店が出ています。この先、小浜付近まではかなり道が狭く、入り組んでいて、複雑な地形なんだなという事が想像できます。
三方五湖から西へ10kmほど。小浜市に到着しました。まずは小浜漁港の御食国若狭おばま食文化館という施設にバイクを停めさせてもらい、ここからは小回りのきくレンタルサイクルで小浜を散策する事にしました。小浜の地図もここでゲッツ! 久々の自転車は、バイクに慣れた体には何か違和感が。でも、気軽に好きなところに停まって写真撮ったりできるし、何より街に溶け込める…。そう思ったら、結構他の観光客も同じようにチャリで散策してました。8時間1000円也。 小浜市は、御食国(みつけくに)と言われ、京の天皇に、食材を納めた国として栄えました。「海のある奈良」とも言われ、数多くの国宝や、重要文化財も数多く残っています。
市内のあちこちに、立派な寺院が建っており、ついつい足が止まる。こちらは長源寺。山門には「向島山」の文字。当時はこの辺一帯が沼地だったのが由来だそうです。 こちらがJR小浜線の小浜駅。ここのホームからは、鉄道好き(特にSL好き)にはたまらないであろうあるモノがあります。それは… SLの給水塔。もうすっかりツタに覆われてしまってますが、それがなんともいい雰囲気です。「小浜駅 給水塔」で検索してみますと、まだツタに覆われてない時の写真など、沢山のページがヒットします。もう使わないものなのかもしれないけど、ずっと残して欲しいですね。
小浜駅前の商店街。「ちりとてちん」のノボリが沢山。でも、そんなに人は多くなくて、開店してないお店も多く、この日はむしろ、ひっそりしていた感じがします。お腹が空いたので、いよいよ「焼き鯖」を求めて、鯖街道起点へ向かいます。 小浜の駅を背にして北西に鯖街道の起点である、「いづみ町」があります。割と狭い路地に、魚屋さんがわんさと並ぶ。3匹の鯖が泳ぐ意匠もオモシロい。 鯖街道起点の看板。この足下に目をやりますと…。
鯖街道起点のプレートがあります。「京は遠ても十八里」と書いてあります。ここから70km先の京都に、商人が食材を運んでいたんですね。 いづみ町に着いたのは午後2時くらい。もっとあちこちで焼き鯖を焼いてて、食堂など大にぎわいなのかと思いきや、すでにピークは過ぎてたみたい。やっと見つけた、取り置きの焼き鯖を1尾ゲット。どこか、見晴らしの良い海辺で食べる事に。 こちらは、「ちりとてちん」の主人公の清美の友人、順子の父の営む食堂のロケ地となった魚屋食堂さん。「焼き鯖くいなれっ!」
焼き鯖を食べるべく、海辺の方にチャリを走らせます。小浜の街には、結構古き良き民家が残っています。 人魚の浜海水浴場に着きました。マーメイドテラスというモニュメントが目印です。ここから眺める夕陽は絶品なのだとか。 さてさて、待望の焼き鯖、いただきます!この大きさ。1尾でお腹いっぱいになります。油びちゃびちゃで、食べた後ちょっと胃がもたれちゃいました。でも大満足!
穏やかな海岸線ののびる、人魚の浜。小浜湾はとっても静かで、ちょっと砂浜の砂の感触が独特な感じ。砂をよくみますと…。 結構砂の粒が大きく、中には砕かれた貝殻なども混じっていました。 海岸沿いの道はキレイに整備されていて、地元の人は朝夕など、こんな素晴らしい風景を見ながらお散歩できるのかと思うと、羨ましくなります。
小浜の駅から見て、西の方に、三丁町という、古い町並み風情を今に残す場所があります。紅殻(ベンガラ)格子の長屋が連なって、まさに小京都といった佇まい。 写真を撮りながらゆっくり散策していると、とあるお店のおかみさんが、ツカツカとやってきて、「焼き鯖寿司、食べなれ」と、味見させてくれた。「ウ、ウマい。」しかし、今は巨大の焼き鯖を丸ごと接種した後で、胃がもたれてるので、帰りにでも何処かで焼き鯖寿司を絶対食べようと誓いました。 三丁町のまわりには古き良き昭和の香りがする風景が満載。この小浜線の高架なんか、良い感じでしょ。
素晴らしい土壁の蔵を発見。土の壁のディテールが、美味しそうなクッキーのごとし。 サクラソウなどをキレイに並べた民家。ふっと足を止めてしまう風景ですが、地元の人には日常なんですよね。おっと、チャリに跨がって撮影中の私が見切れてます。 三丁町を通り過ぎ、小浜線の線路の方に歩いて行くと、この石階段があります。その上には「常高寺」というお寺さん。「ちりとてちん」で、一番印象に残ってる場所。その理由はと言うと…。
石段を上がりきると、すぐ線路。踏切もありません。お寺の門と、石段の間を、時折小浜線が通過します。 もちろん、線路を歩いて渡るわけにはいかないので、常高寺へは、看板に記された迂回路を通って行きます。途中、瀧の水という、湧き水の飲める場所があります。 常高寺の山門。石段の下から見るのとは印象が違い、こざっぱりした感じ。本堂は比較的新しいです。
常高寺にいた、犬っころ。 常高寺の近くにある、空印寺というお寺さんの境内に、このような洞穴が。「八百比丘尼入定洞(はっびゃくびくににゅうていどう)」と言います。
八百比丘尼とは、少女の時に人魚を食べてしまったせいで、800歳まで生きた尼。最後には、この洞穴で死んだとか。マーメイドテラスの人魚も、この話がゆかりのようです。
小浜と言えば、若狭塗り箸。市街地には若狭塗り箸のお店があちこちにあります。
ここも朝ドラで見た風景ですねえ。学校に遅刻しそうなヒロインが走ってった場所。小浜を流れる南川にかかる大手橋を超えて、西津海岸の方へ行ってみます。 西津海岸には、このような、とっても解りやすーい「ガキ大将&その子分の風景」が。こんな風景も、最近ではあまり見られないですね。 ハマダイコンはどこで見ても、その土地の風景をよく演出してくれます。大好きだ。
エーコのお父さんが社長の塗り箸工場、本当にありました。 ロケ地のあちこちに、「ここロケ地」と親切にも看板が立ってます。なんでもかんでも「ちりとての…」を付けてるので、正直うんざり。ここは、「ちりとての浜」なんだってさ。 この船もドラマに出てきましたね。「ちりとての廃船」だってさ。
でも、いい風景です。
では、こちらは、「ちりとての廃屋」とでも言うのかね、ええっ!?
ものすごく芸術的な廃屋を見つけました。
ちょうど、西津地区ではお祭りをやっておりました。この辺は、朝ドラの主人公の実家のロケ地があるところです。結構それを探してウロウロしている人がいました。
私もその一人ですけどね。ええ。
このへんも、風情のある昔ながらの懐かしい民家の風景が続いています。三丁町の小京都の風情とまた違う、海沿いの民家の風景。なんか、古いも、新しいもなくて、調和がとれてて、いいですよね。
ここが、和田塗箸店。主人公の実家として使われた民家です。
今では普通の静かな民家です。
和田塗り箸店の裏手にいたネコ。
「ちりとてのネコ」な訳ですか。もうたくさんです。
結局、「ちりとてちん」ロケ地巡りになってしまいました。レンタルサイクルで半日もあればいろいろ見て回れますよ。
レンタルサイクルを返しに、おばま食文化館へ戻りました。折角なので、食文化館を見学してみます。2階は若狭地方の伝統工芸を紹介するフロア。和田塗り箸店のセットも再現されてました。ちなみに3階は、お風呂。
箸のくずを詰め放題。「ちりとて」ファンなら、これで恐竜を作りましょう。 塗り箸工房の様子も再現されています。若狭塗り箸に、貝殻や、卵の殻を使うのは、海底の様子を表すためなんだそうです。これは、研ぎ出す前のものでしょうか。 落語が流れるラジカセはなかったけど、まさにおじいちゃんの工房。「研いで出てくるのは塗り重ねたもんだけや。一生懸命生きてさえおったら、悩んだ事も落ち込んだ事も、綺麗な模様になって出て来る。」
翌日、天橋立から取って返して、小浜へまた立ち寄って、国道沿いの大きなお土産屋さんの食堂で、焼き鯖寿司を食べました。鯖が大好きな私には、もうたまらない一品でした。このあと、名古屋経由で駒ヶ根に向かう途中、激しい雨にやられました。
昨夜は小浜から西へ20kmほどの、若狭本郷駅の近くに宿をとりました。ちょっと微妙な宿でした。翌日は、国道27号をひたすら西へ走り、日本三景のひとつ、天橋立を目指しました。股覗きの名所、文珠山山頂の天橋立ビューランドへ向かうリフトです。 リフトから振り返ってみると、おおっ!天橋立が!松島に続く、日本三景の一つを制覇。あとは、安芸の宮島残すのみ。 天橋立ビューランドから見る天橋立は、「飛竜観」と呼ばれます。文字通り、天に昇る竜のごとき景観、ということですが、私には、エサを食べてる魚の口、にも見えます。
そして、ここに来たら、もちろん股覗きをやってみましょう。ほおおーっ、確かに天に架かる橋のようです…。こういう風景を、だれが、なぜ、なんのために残したのか、時々考えます。 股覗きもよかったですけど、股覗き人の姿も、私には風景の一つとして、とっても印象に残りました。こんな格好を人前ですることって、あんまりないですよね。 天橋立を、今度は実際に歩いてみます。天橋立に向かう途中、智恩寺という、「知恵を授かる文珠さん」があります。その門前は、一大お土産ストリート。
これは、天橋立と、陸地を繋ぐ橋、「廻旋橋」と言います。読んで字の如く、橋がグルッと90度回転して、船が通れるようになっています。クリックすると、回転している様子が見られます。 天橋立は、全長3.6km、8000本もの黒松の生い茂る、遊歩道となっています。日本三景の碑がありました。夕陽にこの松が照らされると、その影のおかげで、天橋立の道が、あたかも鉄道のレールのようにみえるのだそうです。 天橋立の海岸は、カキの貝殻でギッシリ。このあたりは岩ガキも美味しいんだそうですね。
文珠から、府中方面まで歩いてみようと思いましたが、途中で雨が落ちてきたので、引き返す事にしました。いつか、また来る事があったら、府中方面からの、斜め文字の天橋立を見てみたいと思います。 雨宿りに、とある茶店に入り、「知恵の餅」を頂きました。まるで、お伊勢さんの「赤福」のようです。駒ヶ根へのお土産に購入して、天橋立をあとにしました。
小浜は、朝ドラの「ちりとてちん」をみて、とっても行ってみたくなった場所で、TVで見たのと同様、明るくて素朴な海沿いの街、という印象がありました。レンタルチャリを駆って、もらった地図に記してあったロケ地を巡ってみたのですが、なぜか気持ちがモヤモヤ…。なんとなく感じたのは、この街人の誰もが、観光客を熱烈歓迎、というわけではなく、多くの観光客が同じようにレンタルチャリで街を徘徊している光景、何でも無い風景に、「ここロケ地」の看板が立ってるの図は、もしかしたら小浜に住む人には異様の光景、なのかなあなんて、ちょっと思いました。つまり、いくらTVで有名になって、騒がれようと、小浜の人々は、当たり前の日常を、当たり前に生きてるという事でしょう。そういう部分は、なんとなく佐渡を旅していた時の孤独感に近いものがありました。むしろ、それがよかったかもしれません。お邪魔しました…。
日本三景の天橋立は、知り合いの方にいろいろ聞いてて、一度訪れてみたかったところですが、流石にハッとする風景でした。あまりにも絵になりすぎてて、写真にとっても絵にならない。実際に訪れてみる事をおススメします。